「去年作ったメダルが、保管しているうちに色がくすんできた」というご相談を受けることがあります。めっきの見た目は作った直後には差が出にくいため、安価な見積もりとの違いが分かりにくい部分です。しかし差は確実にあり、それは下地処理の時間に表れます。当社工場が実際に回している9工程を、時間と温度まで含めて公開します。素材そのものの選び方はメダル素材のページでご案内しています。

めっきは「乗せる」のではなく「積む」

電気めっきは、金属イオンを含む溶液に電流を流し、対象物の表面に金属を析出させる処理です。重要なのは、最後に色を付ける層だけでは成立しないという点です。下地の銅層が薄いと、その上に重ねた金色も密着せず、時間とともに剥がれたり変色したりします。

当社の9工程は、この下地を厚く安定して作ることを目的に組まれています。所要時間の大半は、色を付ける工程ではなく下地を作る工程に使われます。

めっきの9工程では何をするのか?

工程内容条件・時間この工程の役割
1除蝋高温処理成形時に付着した離型剤や汚れを除去
2超音波洗浄超音波槽微細な凹凸の汚れを落とし、密着を確保
3アルカリ銅メッキ500秒密着性の高い下地銅層を形成
4酸銅メッキ20〜60分銅層を厚く積み、平滑な面を作る
5着色60〜180秒金・銀・銅などの色を付与
6不動態化薬液処理表面を安定化し、酸化を抑制
7乾燥100℃で40分水分を完全に除去し、密着を固定
8封油コート処理皮膜を保護し、指紋や湿気を遮断
9下掛け治具から外す次工程(入色・彫刻)へ

工程3のアルカリ銅メッキ500秒と、工程4の酸銅メッキ20〜60分が、この工程の要です。アルカリ銅は密着性に優れますが析出速度が遅く、酸銅は速い代わりに密着性が劣ります。両方を重ねることで、密着と厚みを同時に確保しています。

下地の厚みが寿命を決める

めっきの寿命は、色の層ではなく銅の下地の厚みで決まります。銅層が薄いと、その上に載る着色層も薄くなり、外からの水分や酸素が素地の亜鉛合金に到達しやすくなります。亜鉛合金は素地のままでは酸化しやすい金属です。

項目下地を厚くした場合下地を薄くした場合
着色層の密着安定する剥がれやすい
1年後の外観変化が少ないくすみ、変色が出る場合がある
屋外使用対応可能早期に変色しやすい
薬剤の使用量多い少ない
工程時間長い短い

見積もりを比べたときに差が出るのは、この工程時間と薬剤使用量です。同じ「金メッキ」と書かれていても、下地の条件が違えば耐久性は変わります。

着色とその後の処理

着色は60〜180秒で行います。金・銀・銅の3色は標準で、この3色は同じ金型から作れるため、1位・2位・3位のメダルを金型1回で揃えられます。古美色やローズゴールド、二色仕上げは工程が増えるため加算されます。

着色のあとに不動態化を行い、表面を安定させます。不動態化を省くと、着色した表面が空気中の成分と反応しやすくなります。

乾燥は100℃で40分です。この温度と時間は、めっき層の内部に残った水分を完全に除去するために必要です。乾燥が不十分なまま封油すると、水分が皮膜の内側に閉じ込められ、後から曇りの原因になります。

最後の封油は、皮膜を指紋や湿気から守るコートです。屋外で使うメダルや、手に取る機会が多い表彰メダルでは特に効果があります。

めっきの後にくる工程

めっきが終わったメダルは、入色、彫刻、検品へと進みます。

入色では、軟質エナメルなら幅0.3mm、硬質エナメルなら幅0.5mmまで色を入れられます。硬化は低温60〜70℃で半硬化させたあと、高温100℃で完全硬化させる2段階です。彫刻はレーザーで最上層を削り、下地の色を出す方法と、金型に文字を刻んで成形時に一体で作る方法があります。工程全体の流れはメダル製造工程で公開しています。

変色を避けるための保管

めっきが丈夫でも、保管環境によっては変化します。次の点に注意してください。

保管環境影響対策
高温多湿皮膜の劣化を早める乾燥剤とともに密閉する
直射日光着色層が退色する暗所に保管する
ビニール袋の長期密閉内部で結露する場合がある通気性のある袋か乾燥剤を併用
手で直接触れる皮膜を傷める手袋を使う、触れた後は拭く
他の金属との接触異種金属接触で腐食する個別に包む

法人でまとめて保管する場合の管理方法は、追加発注のタイミングとあわせて表彰後の保管と追加発注にまとめています。

よくある質問

9工程はすべてのメダルで行いますか?

標準的な金属メダルでは、すべての工程を実施します。アクリルや木製など、めっきを行わない素材には適用されません。

アルカリ銅メッキの500秒はなぜ500秒なのですか?

下地として必要な密着性と厚みを確保できる最短の時間として設定しています。これより短くすると、密着が不十分になり、後の工程で剥がれが生じる場合があります。

乾燥に100℃で40分かかるのはなぜですか?

めっき層の内部に残った水分を完全に除去するためです。温度を上げれば短縮できますが、着色層に影響が出る場合があります。40分は、品質と時間のバランスから決めた条件です。

変色したメダルは修復できますか?

めっきを剥離して再処理する必要があるため、基本的には再製作となります。めっきの剥離は薬液を使う工程で、部分的な修復はできません。

金色と銀色で耐久性は違いますか?

下地の銅層は共通です。銀色はニッケル系のめっきを使うため、もともと耐食性が高く、屋外の使用に向いています。金色の場合は最終工程で透明コートを重ねて変色を抑えます。

めっきの品質はどう確認すればいいですか?

見積書に工程の記載があるかを確認してください。下地処理の記載がない場合、条件が明示されていない可能性があります。当社では工程と条件を開示しています。


めっきは、注文後に変更しても意味がありません。最初の仕様で決まります。屋外で使うのか、長期保管するのか、手に取る機会が多いのかをお知らせください。用途に合わせためっきの条件をご提案し、24時間以内に無料でお見積もりします。お問い合わせからご連絡ください。合金の選び方は亜鉛合金ダイキャストとはで解説しています。

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