メダルの見積もりを取り比べていると、「亜鉛合金ダイキャスト」という言葉がどの業者でも出てきます。しかし、Zamak 3・5・7のどれを使っているか、鋳造圧がどのくらいかを明示する業者はほとんどありません。同じ「亜鉛合金」でも、合金の種類と成形条件が変われば、細部の再現性と強度は変わります。オリジナルメダルの標準素材でもある亜鉛合金について、当社工場が実際に使っている条件を公開します。
亜鉛合金ダイキャストとは何か
ダイキャスト(die casting)は、溶かした金属を金型に高压で押し込んで成形する方法です。日本語では「圧鋳」とも呼びます。プラスチックの射出成形と似ていますが、扱うのは385℃で溶ける金属です。
メダルに亜鉛合金が選ばれる理由は3つあります。ひとつは流動性が高く、金型の細部まで合金が回り込むこと。もうひとつは融点が比較的低く、金型の寿命を長く保てること。そして3つ目は、プレス加工では不可能な「抜き(オープンワーク)」形状を一体で成形できることです。
当社の冷室ダイキャスト機は88トンの鎖模力で金型を閉じ、そこに385℃の合金を射出します。この圧力と温度の組み合わせが、線幅0.3mm、高さ0.4mmという細かいレリーフを成立させています。
Zamak 3・5・7はどう違う?
Zamakは亜鉛を主成分とした合金の規格名です。メダルで使われるのは主に3・5・7の3種類で、アルミニウム・銅・マグネシウムの配合比が異なります。
| 項目 | Zamak 3 | Zamak 5 | Zamak 7 |
|---|---|---|---|
| 主な特徴 | 流動性と寸法安定性のバランス | 強度と硬度が高い | 不純物に強く、めっきが良好 |
| 抗張力の目安 | 約283MPa | 約331MPa | 約283MPa |
| 密度 | 約6.6g/cm³ | 約6.6g/cm³ | 約6.6g/cm³ |
| めっきの乗り | 良好 | 良好 | 特に良好 |
| 当社での主な用途 | 標準的なメダル全般 | 強度が必要な薄型・大型 | 高級仕上げ、繊細なデザイン |
数値を見るとZamak 5が最も強いのですが、常に5を選べば良いわけではありません。抗張力が高い合金は硬度も上がるため、細かいレリーフの再現性は3のほうが安定する場面があります。当社では、デザインの細かさと必要な強度を見て合金を選んでいます。
なお、密度はいずれも約6.6g/cm³で、真鍮の8.5g/cm³と比べると軽量です。同じサイズでも真鍮のほうが手に取ったときに重く感じるのはこの差によるものです。
成形条件がデザインの限界を決める
ダイキャストのデザイン制約は、合金の種類ではなく成形条件から決まります。以下は当社工場の実数値です。
| 項目 | 数値 | この数値が必要な理由 |
|---|---|---|
| 溶融温度 | 385℃ | これ以下では金型の細部まで流れない |
| 鎖模力 | 88トン | 射出圧に耐えて金型を閉じ続ける |
| 最小壁厚 | 2mm | これより薄いと冷却時に変形・破断する |
| 最小レリーフ高さ | 0.4mm | 合金が溝の底まで到達する下限 |
| 最小線幅(レリーフ) | 0.3mm | これ以下では輪郭が溶けてつぶれる |
| 最小内角半径 | 0.3mm | 角に合金が回らず欠けの原因になる |
| 最小文字高さ | 1.5mm | 判読性の下限 |
| 1サイクル | 15〜30秒 | 1日30,000枚以上の生産を支える |
デザインを起こす際に最も多いトラブルは、線が細すぎる、角が鋭すぎる、肉厚が薄すぎるの3つです。いずれもIllustratorで線を太らせ、角に丸みを付け、厚みを確保すれば解決します。当社では無料デザインの段階でこの点を確認し、修正案をお送りしています。
他の成形方法との比較
亜鉛合金ダイキャストは万能ではありません。プレス加工や射出成形と比べると、得意・不得意がはっきりしています。
| 項目 | 亜鉛合金ダイキャスト | プレス(打ち抜き) | 樹脂射出成形 |
|---|---|---|---|
| 立体表現 | 3Dレリーフが可能 | 平板な浮き彫りのみ | 3Dが可能 |
| 抜き形状 | 一体成形できる | 別工程が必要 | 一体成形できる |
| 金属の質感 | あり、めっき可能 | あり、めっき可能 | なし |
| 最小ロット | 100枚から有利 | 100枚から有利 | 少量から可能 |
| 手に取った重さ | あり | あり | 軽い |
| 耐久性 | 高い | 高い | 金属より低い |
金属の質感と重さを両立させたい場合は亜鉛合金が適しています。軽さを優先する場合はアルミニウムやアクリル、コストを優先する場合は鉄のプレス加工という選択肢があります。素材ごとの比較はメダル素材のページでご案内しています。
成形後の工程
ダイキャストで成形しただけでは、メダルは完成しません。バリ取り、研磨、めっき、入色、彫刻という工程が続きます。
めっきは9工程で、除蝋、超音波洗浄、アルカリ銅メッキ500秒、酸銅メッキ20〜60分、着色60〜180秒、不動態化、100℃で40分の乾燥、封油、下掛けという順に進みます。特にアルカリ銅メッキの500秒は、下地の密着性を決める重要な時間です。ここを短縮すると、見た目は同じでも1年で変色しやすくなります。
入色では、軟質エナメルなら0.3mm、硬質エナメルなら0.5mmの幅まで色を入れることができます。硬化は低温60〜70℃で半硬化、そのあと高温100℃で完全硬化という2段階です。成形から出荷までの全工程はメダル製造工程で公開しています。
よくある質問
Zamak 3と5は見た目で区別できますか?
できません。外観はほぼ同じで、違いは強度と成形性です。ただし仕上がりに差が出る場面はあり、薄い形状や大きなサイズではZamak 5のほうが歪みが少なくなります。
なぜ最小壁厚が2mmなのですか?
亜鉛合金は冷却の際に収縮します。2mmより薄いと、収縮に耐えられず反ったり割れたりします。デザイン上どうしても薄くしたい場合は、リブを入れて強度を補う方法があります。
レリーフの高さはどこまで出せますか?
0.4mmが下限で、上限は特にありませんが、高くしすぎると成形時に合金が回りにくくなります。実際には1mm前後が最も安定して美しく仕上がります。
亜鉛合金は錆びますか?
素地のままでは酸化しますが、電気めっきと封油で保護します。屋外で長く使う場合は、ニッケルめっきの上に透明コートを重ねる構成をおすすめしています。
成形のロットはどれくらいから可能ですか?
金型を製作するため、100枚からが目安です。アクリルや木製であれば、より少ない枚数からお受けできます。
サンプルで質感を確認できますか?
はい。7〜10日で実物サンプルをお送りします。レリーフの深さと合金の質感は写真では伝わらないため、必ずお手に取ってご確認ください。
合金の選定は、デザインと用途が決まってからで問題ありません。まずはロゴやスケッチ、希望サイズと枚数をお送りください。24時間以内に最適な合金と仕様をご提案し、無料で3Dレンダリングをお作りします。お問い合わせからご連絡ください。仕上げの違いはメダルのめっき9工程で解説しています。
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