テニス大会のメダルは、野球やサッカーの感覚で枚数を数えると、まず足りなくなります。たとえば32校が参加する団体戦で、1校あたりの登録部員が8名だとします。上位3校に部員全員分を授与すると、3校×8名で96枚。ここに個人戦の男女シングルス・男女ダブルスの4部門を各3位まで加えると、シングルス2部門×3名=6枚、ダブルス2部門×3組×2名=12枚で18枚。さらに参加賞を100枚(1デザインあたりの最小ロット)で足すと、合計214枚になります。参加賞を出場者全員の256名分にすると370枚です。同じ「32校の大会」でも、表彰の設計次第で必要枚数は1.7倍以上変わります。

私たちは広東省恵州の自社工場で、2010年の創業からオリジナルメダルの鋳造を続けてきました。この記事では、テニスという競技の表彰構造を前提に、枚数の組み方、校章・部章のモールド限界、エナメル、サイズ、リボン、納期までを、実際に受けている注文の流れに沿って整理します。

[画像: tenisu-medaru-seisaku-guide.jpg — テニス大会・部活向けオリジナルメダル(金・銀・銅)とリボンのイメージ]

なぜテニスのメダルは構成が違うのか

テニスの表彰が他の競技と大きく違うのは、団体戦と個人戦が同じ大会で並行して行われる点です。野球やサッカーは団体戦が中心で、表彰の単位は「チーム」ひとつ。バスケットボールも同じです。ところがテニスは、学校対抗の団体戦(学校対抗戦)と、シングルス・ダブルスの個人戦が同一日程で組まれ、それぞれに優勝・準優勝・3位の表彰が発生します。

二つ目は、ソフトテニス(軟式)と硬式テニスで運用が違うことです。中学校・高校の部活動で圧倒的な基数を持つのはソフトテニスです。日本で生まれた競技で、学校の部活として全国に広がったため、団体戦の格式が高く、都道府県大会・ブロック大会・全国大会と階層がはっきりしています。一方、硬式テニスはクラブチーム・スクール・協会主催のオープン大会が主体で、個人戦の比重が大きく、参加者の年齢層もジュニアからシニアまで幅広くなります。同じ「テニスメダル」でも、求められる枚数の出し方が別物になるのはこのためです。

三つ目は、ダブルスという単位です。1組につき2名分のメダルが必要で、混合ダブルスなら男女それぞれに1枚ずつ。ここを「1組=1枚」と数えてしまうのが、テニスで最も多い枚数ミスの原因です。私たちの工場でも部門表と枚数表が食い違うことがあり、そのたびに「ダブルスは2名分です」と確認しています。

ソフトテニス部・硬式テニス部・スクールで需要がどう違うか

一口にテニスといっても、発注の時期・枚数・デザインの傾向は団体ごとに違います。私たちが受ける注文を整理すると次のようになります。

区分主な発注時期枚数の傾向デザインの傾向
中学校・高校ソフトテニス部6〜8月(引退記念・総体)、3月(卒部記念)引退記念の全員分が主体。100〜200枚校章+部章、部カラー1色のエナメル、年度と部員名
中学校・高校硬式テニス部6〜8月、3月。個人戦の入賞分を追加個人戦の入賞分が中心。100枚前後ラケット・ボール・コートラインのモチーフ、氏名入り
市区町村テニス協会春季大会・秋季大会の年2回部門数×順位数+参加賞で300枚前後協会ロゴ、大会名と回次、部門別にエナメル色を変更
クラブチーム・社会人サークル年間を通して。創立記念・定期戦少人数。100枚ロットを数年に分けて使うクラブカラー、シンプルなワンモチーフ、名入れなし
ジュニアスクール発表会・クリスマス会・進級テスト在籍数に応じて100枚から300枚明るい配色、動物や星などの低年齢向けモチーフ

ソフトテニス部の特徴は、引退記念という独自の需要です。3年生が6〜8月に引退するタイミングで、部員全員に配る記念メダルを発注する文化があり、大会の入賞メダルとは別枠で動きます。この場合、表彰台に上がった生徒だけでなく、控えの部員やマネージャーも含めた全員分が必要です。逆にスクールは、順位ではなく「その期を修了したこと」の証明としてメダルを使うため、金・銀・銅の色分けが不要で、1色で統一されることが多くなります。

団体戦と個人戦の表彰構成をどう組むか

テニス大会のメダルは、どの表彰枠に何枚必要かを先に表に落とすと、その後の見積もりが一気に正確になります。私たちがお客様と必ず確認するのは、次の6つの枠です。

表彰枠授与対象枚数の数え方デザインの扱い
団体戦 優勝優勝校の登録部員全員部員数×1校金めっき。校名を大きく
団体戦 準優勝準優勝校の登録部員全員部員数×1校銀めっき。同一金型
団体戦 3位3位校(2校なら2校分)部員数×校数銅めっき。同一金型
個人戦 各部門シングルス・ダブルスの入賞者部門数×順位数×人数部門ごとにエナメル色を変更
MVP・優秀選手大会ごとに1〜数名選出人数分大径サイズ+硬質エナメル調
参加賞・記念出場者または引退部員配布対象の人数分小径・1色。名入れは任意

この表で最初に決めるべきは、団体戦の3位を何校にするかです。学校対抗戦では3位決定戦を行わず、両方の準決勝敗者を3位とする運営が一般的で、その場合は3位校が2校になります。32校・各部員8名の大会で3位を2校にすると、団体戦だけで96枚。3位を1校に絞ると88枚で、8枚の差が出ます。締切直前の追加発注は工程を通し直すことになるため、最初の部門表で確定させることをおすすめします。

二つ目は、個人戦の部門数を確定させること。男女シングルス・男女ダブルスの4部門に、学年別(1年・2年)を掛けると8部門になります。1部門3位までなら、シングルスは3枚×部門数、ダブルスは3組×2名=6枚×部門数。4部門なら個人戦だけで18枚、8部門なら36枚です。ここに混合ダブルスが加わると、さらに2名×順位数が増えます。

三つ目は、同じ金型で色だけ変えるという設計です。団体戦の優勝・準優勝・3位は、形を共通にしてめっきだけを金・銀・銅に変えれば、金型は1つで済みます。個人戦の部門識別も、エナメルの色を部門カラーに変えるだけで対応できます。テニスは部門が増えやすい競技なので、この「1金型・多バリエーション」の設計が、コストと納期の両方を守る近道になります。

校章・部章をモールドに落とす

テニス部のメダルで最も多いのが、校章と部章の再現です。ここには必ずと言っていいほど調整が発生します。理由は、学校の校章が「印刷物として設計された図案」だからです。細いリボン状の曲線、囲みの二重丸、ローマ字の校名、設立年、ときにはグラデーションまで含まれています。これを金属の凹凸に置き換えると、情報量が落ちます。

私たちのダイカストでは、亜鉛合金(Zamak 3・5・7)を88トンのダイカストマシンで金型に流し込みます。融点385℃で細部まで回り込みやすい素材ですが、表現には下限があります。最小線幅0.3mm、最小レリーフ高さ0.4mm、最小肉厚2mm。これより細い線は金型の湯道で埋まり、量産時に潰れます。校章で問題になりやすいのは、次の4点です。

  • 細い曲線:校章のリボンや蔦の線は非常に細く描かれていることが多く、そのままでは潰れます。線を0.3mm以上に太らせるか、面として塗りつぶして段差で表現します。
  • 小さな文字:ローマ字の校名は、線幅0.3mmを確保できる範囲まで簡略化します。画数の多い漢字は、部門名だけに絞る判断も必要です。
  • グラデーション:金属の凹凸では連続した階調は出せません。2〜3段の段差に置き換えるか、エナメルの色面で表現します。
  • 囲みの二重丸:外周の細い輪は、肉厚2mmを割りやすい部分です。輪を太くするか、外周を肉抜きして内側に意匠を寄せます。

実務的には、校章は「線」ではなく「面」で作り直すのが最も安定します。線で描かれた校章を黒く塗りつぶしたシルエットに変換し、そこに0.4mmのレリーフを与える。これで遠目にも校章と分かり、量産でも欠けません。データはPDFやAI形式のベクターが理想ですが、写真しかない場合はトレースから起こします。図案の調整はデザイン制作の窓口で、金型の都合と照らし合わせながら進めています。

なお、校章と部章を同じ面に並べると、直径40mmでは要素が密集しすぎます。50mm以上を選ぶか、表面を校章・裏面を部章と年度に分けると、図案が生き残ります。

軟質エナメルと硬質エナメル調の比較

色入れは、メダルの印象を最も大きく左右します。テニスでは、コートの面やボールのような広い面積を塗ることが多いため、エナメルの種類の選び方が仕上がりに直結します。

項目軟質エナメル(焼付塗装)硬質エナメル調
入り込みの深さ0.3mm0.5mm
表面の印象平滑でマット寄り。盛り上がりが少ない盛り上がりがあり、硬質でキレのある光沢
耐摩耗性実用範囲。引退記念など長期保管に向く摩耗に強く、日常的に触れる場面に向く
コスト抑えやすい工程が増えるため高くなる
向く用途コート面、背景の広い色面、参加賞校章の輪郭、部門名、MVPメダル

私たちの経験では、テニスのメダルは軟質エナメルが主役になります。コートのオムニ面やクレー面、ボールのイエローグリーンといった広い色面は、平滑な軟質エナメルで塗ると図案がすっきり見えます。逆に、校章の輪郭や「優勝」の文字など、輪郭を立たせたい部分だけ硬質エナメル調にする分割も可能です。1枚の中で2種類を使い分けると、コストを抑えながら要所だけ質感を上げられます。

色数は増やすほど表現力が上がりますが、版と工程も増えます。テニス部のメダルは、部カラー1色+白+黒の3色に収めると、遠目でも図案が崩れず、ロット間の色差も管理しやすくなります。色の設計はメダル素材でご相談ください。

サイズと厚みの選び方

テニスメダルでよく選ばれるのは、直径40mm・45mm・50mm・55mm・60mmの5サイズです。数字だけを見ると大きいほうが立派に見えますが、実際に手に取ると印象はかなり違います。

40mmは軽く、首にかけても負担になりません。参加賞やジュニアスクールの修了記念、部員全員に配る引退記念に向いています。45mmは日常的な大会の入賞メダルとして最も扱いやすく、氏名を入れても窮屈になりません。50mmは団体戦の優勝・準優勝で選ばれることが多く、校章と部章を両面に分ければ図案に余裕が生まれます。55mmと60mmは、MVPや優秀選手、協会主催大会の優勝など、枚数を絞って特別感を出したい場面に向きます。

厚みは、最小肉厚2mmを下回らない範囲で設計します。厚みを増すと手に取ったときの重量感が増し、同じ直径でも格上に見えますが、材料と成形の負荷も上がります。そのため私たちは「直径を上げるか、厚みを上げるか」を必ずお客様に選んでいただいています。参加賞のように枚数が多いものは直径40mm・標準厚み、優勝メダルのように枚数が少ないものは直径55〜60mmで厚みを増す、という組み合わせが最も多くなっています。

リボンと配色

メダルはリボンと一体で初めて完成します。テニスの場合、リボンの色は部活カラー・学校カラー・協会カラーの3種類から選ばれることがほとんどです。

部活カラーは、部員がユニフォームやラケットのグリップで使っている色をそのまま持ってくることが多く、メダルのエナメルと揃えると統一感が出ます。学校カラーは校旗や校章の配色に合わせるパターンで、卒部記念や学校行事の表彰に向いています。協会カラーは、大会名と回次をプリントしたリボンと組み合わせるのが定番です。

リボンは色だけではなく、首にかけるタイプか、手渡し用の短いタイプかでも印象が変わります。団体戦の表彰のように整列して一斉に授与する場面では首掛け型が便利で、引退記念のように一人ずつ手渡す場面では短いタイプや化粧箱との組み合わせも選ばれます。リボンの仕様はメダルリボンでご案内しています。

配色で私たちが避けたいのは、金めっきに黄色のエナメルを重ねる組み合わせです。遠目で金と黄色が溶けて、図案が読めなくなります。金めっきには白・紺・えんじ、銀めっきには紺・緑・赤、銅めっきには白・黒・深緑が、輪郭を保ちやすい組み合わせです。

年間スケジュールから逆算する

テニスのメダルは、発注時期がはっきりしているのが特徴です。部活は引退と卒部、協会は春秋の大会、スクールは発表会。この3つの山を押さえておけば、年間の生産計画が立てやすくなります。

時期部活(ソフトテニス・硬式)協会・クラブスクール(ジュニア)発注の動き
3月卒部記念・年度末の部内戦年度総会の表彰進級テスト・修了式2月中に確定、3月上旬に納品
4〜5月春季大会・県大会の団体戦春季市民大会春の体験会3月中に発注、4月下旬に納品
6〜8月総体・引退記念(最大の山)サマー大会・ジュニア大会夏期講習の皆勤賞5月中に部門表を確定
9〜11月新人戦・秋季大会秋季市民大会・クラブ対抗秋の発表会8月末までに発注
12〜2月冬季錬成会・部内ランキングインドア大会・忘年会表彰クリスマス会・発表会11月中に発注

最も混み合うのは6〜8月です。引退記念と総体の入賞メダルが重なり、しかも部員全員分の枚数が必要になります。5月中に部門表と枚数表を固めておけば、納期に余裕が生まれます。納期は24時間で見積とデザイン案、サンプル7〜10日、量産7〜15日。6月の引退に間に合わせるなら、5月上旬のデザイン確定が安全です。

生産能力は1日30,000枚以上あります。300枚の注文は、この能力の1%程度にすぎません。それでも余裕を持ってお願いしているのは、ボトルネックが成形ではなく、めっきと乾燥だからです。私たちのめっきは9工程で、脱脂→超音波洗浄→アルカリ銅メッキ(約500秒)→酸銅メッキ(20〜60分)→電解着色→乾燥(トンネル炉100℃・40分)→保護塗装→吊り下げ、と進みます。アルカリ銅の約500秒に酸銅の20〜60分、乾燥の40分を足すと、1ロットがめっきから乾燥を抜けるまで最低でも約68分。枚数が増えれば槽を回す回数も増えるため、繁忙期は順番待ちが発生します。工程の詳細は製造工程をご覧ください。

よくある失敗

実際に起きたつまずきを共有します。

部門数を数え違える。 男女×シングルス・ダブルスで4部門のところを、混合ダブルスを忘れて3部門で見積もってしまうケースです。混合ダブルスは1組2名分なので、3位までなら6枚、参加賞を含めるとさらに増えます。部門表は「種別×性別×学年」の3軸で一度書き出し、最後に混合を足すと漏れません。

ダブルスのペア分を忘れる。 1組=1枚で計算してしまい、授与の当日に半分しかないという失敗です。ダブルスの部門は必ず「組数×2」で数えてください。

校章データが低解像度。 スマートフォンで撮った写真や、PDFから画像として書き出しただけのデータは、線が潰れてトレースできません。ベクターのAI・PDF・SVGが理想です。無い場合は、線の太さが分かる高解像度画像をご用意ください。

ロット間の色差。 追加発注が数か月ずれると、エナメルの色味がわずかに変わることがあります。特にえんじ・深緑・紺は差が出やすい色です。引退記念のように全員が同じ色を持つ場面では、追加分をまとめて発注するか、基準サンプルを保管してください。私たちは3段階の品質管理で合格品100%納品を徹底していますが、色はロットに依存するため、事前の共有が最も確実です。

名入れの締切を過ぎる。 氏名入りは1枚ずつ刻印するため、受賞者リストの確定が遅れると量産に間に合いません。ご相談は名入れメダルで承っています。

よくある質問

ソフトテニス部と硬式テニス部で、メダルのデザインは分けるべきですか?

分けることをおすすめします。ソフトテニスは団体戦の格式が高く、校章と部章を正面に据えた構成が好まれます。硬式は個人戦が中心で、ラケットやボール、コートラインをモチーフにした図案と、氏名を入れるスペースが求められます。同じ学校で両方の部がある場合は、形状を共通にしてモチーフとエナメル色だけを変えると、金型を増やさずに識別できます。

校章の線が細かく、そのままでは再現できないと言われました。どうすればよいですか?

線を面に置き換えるのが基本です。私たちの成形では最小線幅0.3mm、最小レリーフ高さ0.4mmが下限なので、それより細い線は太らせるか、塗りつぶしたシルエットにして段差で表現します。二重丸の囲みは外周の肉厚2mmを割りやすいため、輪を太くするか内側に意匠を寄せます。ベクターデータがあれば調整は短期間で済みます。

ダブルスのメダルはどう数えればよいですか?

1組につき2名分です。3位まで表彰するなら3組×2名で6枚、混合ダブルスも同じく6枚になります。団体戦の登録部員がダブルスにも出場する場合は、同じ生徒が2枚受け取ることになるため、名入れの有無を分けると整理しやすくなります。

100枚未満でも製作できますか?

最小ロットは1デザインあたり100枚です。メダル製作のコストの中心が金型という固定費のため、枚数が少ないと1枚あたりの負担が大きくなります。クラブチームのように必要枚数が少ない場合は、デザインを1つに絞ったうえで100枚を作り、次年度や記念行事の分として保管する発注が現実的です。複数デザインに分けると、その数だけ100枚が必要になります。

引退記念として、部員全員の氏名を入れられますか?

レーザー彫刻で1枚ずつ対応できます。氏名・年度・部名を裏面に刻印するのが一般的で、表面の校章やモチーフを損ないません。部員名簿をそのままお送りいただければ、その内容に沿って刻印します。マネージャーや顧問の分も同じ仕様で揃えられます。

納期はどのくらいですか?

24時間で見積とデザイン案をご返しし、サンプルは7〜10日、量産は7〜15日が目安です。6〜8月の引退シーズンは混み合うため、大会日程・部門数・表彰日が決まった時点でご相談ください。1日30,000枚以上の生産能力がありますが、めっきと乾燥の工程がボトルネックになるため、早めのご連絡が納期を守る最善の方法です。

お見積り・デザイン案のご依頼

テニスのメダルは、団体戦と個人戦の併存、ダブルスの2名単位、引退記念の全員配布が重なる、枚数設計の難しい分野です。部門表を先に固めることが、コストも納期も守る近道になります。

大会日程・部門数・表彰日の3点を送っていただければ、24時間でデザイン案と内訳見積を返します。 校章のデータがない場合も、写真からトレースして図案をご提案します。2010年から50か国以上にメダルを届けてきた恵州工場の経験を、その大会の一枚に活かします。

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